先週の金曜日、Health Centreで妊婦にHIV testを勧めていた。
お金がない人が多いので、郡病院までわざわざHIV testを受けに来てくれる人はごくわずか。
でも今週の月曜日、1人の妊婦が家から1時間半はかかる郡病院へ来てくれた。
なんとなく気になることがあったから、来てくれたのか、ただ単純に私の説明を聞いて必要性を理解してくれたのか分からないが、見た目には健康そのものの若い妊婦さん。
23歳、既婚、子ども0人、1経産
妊娠38週、出産予定日2007年12月28日
HIV test:Positive
うちの郡にたった1つしかない病院だけど、設備が整っておらず、HIVの治療はできない。
翌日、Kumasiの病院へ彼女と一緒に行ってきた。もう一度確認のためHIV testを受けるが、やはり陽性。
HIV母子感染は3経路。
1.子宮内感染
2.産道感染
3.母乳感染
何の予防策も講じなければ、感染率は約30%と言われている。最も感染リスクが高いのは分娩時の産道感染。
彼女はもう妊娠38週なので、子宮内感染を起こしていた場合、母子感染を免れないが、一番リスクの高い産道感染に対してはまだ間に合うかもしれない。抗HIV薬を服用し帝王切開をすれば、感染率は大きく下がる。しかし、健康保険に入っているガーナ人はほんの一握りで、彼女もまたお金がなくて健康保険には入っていないため、帝王切開なんてとんでもない。できることは抗HIV薬の服用のみ。だが、抗HIV薬さえ、5GHC/月。日本円にすれば約500円だけど、お金がない彼女にとってはとても高い。
「・・・払えない。」
彼女は経産婦だが、2年前に産んだ第1子は出生後数日で死亡している。原因は分からないが、もしかしたらHIV感染によるものかもしれない。彼女に元気な赤ちゃんを産んでほしいと思った。彼女のHIV感染をなかったことにはできないけど、せめて母子感染は防ぎたい。もういつ産まれてもおかしくない状況。お金を工面してから再度病院にやってくる時間はない。
だから、今回は私が払った。
2日後、彼女の夫が郡病院にHIV testを受けにきた。
結果、Negative。
結婚して数年、普通に性交渉も行ってきただろうけど、夫には感染していなかった。HIVは女性の方が感染リスクが高いとは言われているが、夫に感染していなかったのは幸いだった。
今後、彼女は赤ちゃんを産み、薬を飲み続けなければいけない。母子感染を予防するには、母乳育児をストップし、赤ちゃんもしばらくは抗HIV薬を服用する必要がある。育児、金銭面、精神面など、夫の支援は絶対。妻の感染を知ると、家から追い出してしまう夫もいると聞くが、嬉しいことに彼は、「頑張って妻を支えていく」と言ってくれた。
これから彼女たちが向き合っていかなければいけない問題は山ほどあるかもしれないが、2人で乗り越えていってほしい。そして、何よりまずは、彼女が無事に健康な赤ちゃんを産んでくれますように。