2年間、私の活動の中心となってきた妊婦健診。
聴診や触診など妊婦健診を手伝いながら、妊婦にHIV&AIDSの情報を伝え、検査を勧めること、カウンセラーの意欲を高めること、プライバシーに配慮すること、HIV陽性妊婦のその後のフォローをすること等を行ってきた。しかし、どれも十分にやれたとは言い難い。言語の不自由、スキルの不足、価値観の違いという壁など、ここで成果を残すためには私には足りないものがたくさんあった。そんな様々な要因が絡み合って、自分が諦めてしまったり、相手が逃げてしまったりと、スムーズにはいかなかった。1人の意識を変えることなら、まだ簡単。しかし、その1人が集団に属しているから難しい。改善点を配属先に提示したり、耳を傾けてくれる人に訴える等していると、個人的に共感を示してくれる人はいた。しかし、個人の賛同は得られても、集団の意識を変えるのは難しかった。そのために何をどうしたら良いかは、私には分からなかった。
HIV検査についてまとめたもの
妊婦健診の場で、任期後半はマンパワーとしての役割を果たすことが多くなり、それにより助産師との信頼関係は構築されつつあったと思うが、結局それ以上に踏み込むことはできなかった。自分がまた集団から遠い存在になってしまうのが怖かったのだと思う。きっと、これが外国人ボランティアという特権を生かしきれなかった一番の理由かなと思う。
トラウベと呼ばれる器具で胎児の心音などを聴診中
ただ要請内容に関係なく、私自身としてはたくさんの妊婦さんと対面し、彼女達を通して母親の、人間のたくましさを知り、お腹の中のまだこの世に誕生していない命に触れられる喜びを感じられるこの活動は楽しく、これからの私の方向性を見つけるために大切な活動だったと思う。